53、土佐の小夏  (平成30年3月5日)

 高知も今年の冬は地元の方々が、寒い寒いと過ごしていましたが、流石に3月になると急に暖かくなってきました。 暖かくなると、人間の体は美味しい果物が欲しくなります。 自然の不思議ですが、この時期になると、高知では独特の美味しい味の文旦が出回ります。 文旦は生産者が殆ど年末に収穫して、適度な温度で保管します。 この暖かくなる時期に一斉に店頭や市場に並びます。 しばらく文旦が出回ったのちに、3月末ごろになると小夏が出回るのです。
 南国土佐の初夏は、あっという間で、そのごくわずかな期間に、旬を迎えるのが小夏。 高知では店頭に小夏が出回ると夏の訪れを感じます。 高知で小夏と呼ばれますが、宮崎県では日向夏、愛媛県ではニューサマーオレンジと呼ばれています。 小夏は、18世紀初めに宮崎県のある邸宅で偶然発見され、当時は酸味が強く食べられなかったそうですが、その後、改良され広く栽培されるようになったようです。 種の起源は柚子が突然変異したものと考えられています。 宮崎県で生まれたこの柑橘が、土佐小夏として広く全国に愛されるようになったのは、黒潮暖流がもたらす暖かな気候風土。 そして、リンゴのように皮をスルスルと剥ぎ、白い甘皮と一緒に食べる方法を、高知県呉農林技師の方が考案されたことによるといわれています。
 小夏の白い甘皮は肉厚でふかふかしており、それが小夏の爽やかな酸味に加味され上品な甘みを感じることができます。 夏みかんのように酸っぱくなく、みかんのような甘さもない、ほどよい甘さと酸味の優れたバランスと、喉をスーッと潤すジューシーさが何ともいえません。
 
 数年の間、高知の柑橘の生産者とお付き合いを続ける間に、果物の味にトコトンこだわる生産者S氏と知り合いになり、彼の果物栽培に関するこだわりを知ることになりました。
その内容は、黒潮香る海岸沿いに農場を探し続けて現在三か所で栽培している。 敵地でないと本物はできない。 美味しいみかん作りのポイントは、風通しがよく、太陽が降り注ぎ、土地のもつ温度が暖かく一定していること 。それぞれの果物を最も食べごろの時期に収穫すること。 以上、三点にこだわり続け栽培しているのです。
 時々S氏から作業が終わる夕刻に電話を頂き、近くで一杯やろうといわれるので、喜んで出かけるのですが、ご本人は何時もビールグラスに烏龍茶で、みかん栽培のイロハを伺うはめになります。 おかげで、素人の私が短期間で、多くのことを学ばせていただいているのです。 従って、販売先に対してはかなりレベルの高い内容をお伝えすることができるようになっています。

 最近、不思議に感じるのが、農産物や果物に関して、市場に出回る時期は、生活者が求める時期にそれなりの農産物が出回るということです。 これは長い間に生産物が消費者に選別されてきているのか、農産物の旬の時期は、生活者が求める時期に収穫できるタイミングになるのか。 いずれにしても自然界の素晴らしさに、時折感心するこの頃です。
 物流の役割は、それぞれの作物を旬の時期に、タイミングよく届けることにあると、今更のように感じています。

2018年03月05日