84、輪抜けさま(令和元年7月3日)

 両親の郷里高知に住み始めて3年ほどになる。今年、知人から“輪抜けさま”の行事を初めて知った。正式には、「夏越(なごし)の祓(はらい)」とか、「水無月の祓」ともいわれ、藩政時代から続く伝統行事だそうである。緑の茅(ちがや)の輪を抜け、けがれを祓(はら)い、緑の生気を得て暑い夏を健やかにと祈る行事のようである。茅(ちがや)の輪は、神社の氏子さんを中心に作られるとのこと。きっちりと細く巻いてあるところ、茅をざっくりと巻いてあるところと色々で、大きな緑の茅の輪が直径4.85メートルの神社もあるそうだ。訪れた人は、ぐるりぐるりと左、右、左と「8」の字を描きながら、夏の匂いがする緑の茅の輪をくぐり、無病息災を祈る。
 「輪抜けさま」がおわれば土佐路は夏本番に突入する時期のようであるが、今年はなぜか、梅雨に突入し、雨の中のお祭りになった。高知市から、東へ約20キロ土佐龍馬空港の東側から土佐湾に流れ込む、一級河川、物部川の川沿いに広がる香北町に、6月30日に開催された。
 「輪抜けさま」の会場、「大川上美良布神社」がある。この神社の社殿の規模も大きく木割りも堂々として落ち着きを感じさせ、屋根は幕末の造りにしては美しく優美であり、伝統ある立派な神社である。
 この地域も人口減少、高齢化が進んでいて、年間を通しての多くの伝統行事も、それを継続するのが大変のようである。今回誘われたのも、ぎりぎりの戦力で祭りを維持している状況で、神社の関係者から、協力要請があったのが現状だ。
 2週間ほど前の打ち合わせ会に参加した、参加者は高齢者が多く、まとまりのない打ち合わせであった。およその状況を推移しながら、私からは、二つ提案させてもらった。一つ目は、最近、アメリカに40年余り生活していた、東京・浅草生まれのK氏による、子供たちに英語を親しんでもらう「英語で遊ぼう」のイベント。二つ目は7、8店の屋台が計画されていたので、鉄板を持ち込んで、「焼きそば」を作ることである。二の案は承認され取り組むことになった。
 開催当日は、前日からかなりの雨降りの天候が予測されたが、雨天決行ということで、準備して早めに境内へ向かった。茅の立派な輪とお客様用のテントは既に用意されていたが、かなり強い雨が降っていたために、全体のレイアウトの変更を余儀なくされ、5・6名の年配者による実行委員は境内で雨を見ながら考えあぐんでいた。
 しばらく境内の雰囲気を味わっていた私は、御了解をえて、自分の屋台の場所を決めて、鉄板等を下し準備を開始した。最初は心配したが、徐々に参加者が増え、昼過ぎにはお客様を迎える準備もできてきた。午後8時頃で終始、降り続く雨の中であったが、祭りは予定通り進行し、多くの方が参加してくれた。「英語で遊ぼう」のイベントも子供たちの歓声の中で、二度ほど開催され、「焼きそば」もほぼ完売することができた。
 地元に長く根付く、伝統行事は地域にはかけがえのないもので、主催者側、お客様を問わず皆で継続して盛り上げていかなければと強く感じた。

2019年07月03日